~小学校

11/13
前へ
/32ページ
次へ
俺が小学校4年生に進級して間もない頃、その出来事は起こってしまった。 ある日学校から帰ってくると、またしても母が深刻そうな表情で俺の帰りを待っていた。 俺は、母がこの顔で待っている時は必ずよからぬ事に遭遇したり、後々の生活に関わってくる事柄を話す事を理解していたので、部屋に鞄を置くとすぐにリビングに行った。 今度は何の話をする気やら... 俺は半分あきれた気持ちで母の話を聞く事にした。 だが母の話の内容は、俺が予想もしなかった一番最悪の話だった―――。 母『お母さん、新ちゃんと別れようと思うんよ』 俺は、またしても今までのように言葉に詰まった。 こいつは今何と言った? また別れると言ったのか? 母『たしかにあんたらには悪いとは思うで? これまで何年も一緒におったんやし、つらいやろう。』 まぁそうだろう、これでも一応小学1年の半ば頃から今まで面倒を見てきてもらってたのだ。 でも、俺はお父さんしか信頼してなかったので、特に支障はないが... 弟はちがう。 弟は新ちゃんによく懐き、本当の親子のようにこの数年間を過ごし、挙句新ちゃんの事を『父ちゃん』と呼んで慕っていたくらいだ。 もしこの事を弟に話せば、間違いなく前回の離婚の時より傷が深くなるだろう。 俺『じゃあそれがわかってて、何でまた別れんの?』 母『あんたの意見は聞いてないんよ! 黙って聞いとけ 』 ...ようするに、これは相談ではなく決定事項らしい。 そして俺は自分の言いたい事も言わせてもらえないまま、ひたすらお前のわがままを聞き続けるってか? よくこの世の中に、親に対してこんな都合のいい息子がいたものだ。 だが一応母はその質問だけには答えてくれた。 俺はその答えを聞いた瞬間、そんな馬鹿な質問をした自分を後悔することとなった―――。 母『お母さん、他に好きな人できて、その人と結婚しようと思ってるんよ』 俺はブチ切れるかと思った。 これは互いに合わずに別れた前の離婚より、よっぽどタチの悪い理屈だった。 またしても、こいつのわがままのせいで俺や弟、新ちゃんが振り回される事になってしまうのか...。 俺はそのまま何も言わずに自室に戻った。 新ちゃんが帰ってくるのは次の日の朝――― 時間は確実に刻一刻と近付いてきていた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加