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俺が小学校4年生に進級して間もない頃、その出来事は起こってしまった。
ある日学校から帰ってくると、またしても母が深刻そうな表情で俺の帰りを待っていた。
俺は、母がこの顔で待っている時は必ずよからぬ事に遭遇したり、後々の生活に関わってくる事柄を話す事を理解していたので、部屋に鞄を置くとすぐにリビングに行った。
今度は何の話をする気やら...
俺は半分あきれた気持ちで母の話を聞く事にした。
だが母の話の内容は、俺が予想もしなかった一番最悪の話だった―――。
母『お母さん、新ちゃんと別れようと思うんよ』
俺は、またしても今までのように言葉に詰まった。
こいつは今何と言った?
また別れると言ったのか?
母『たしかにあんたらには悪いとは思うで?
これまで何年も一緒におったんやし、つらいやろう。』
まぁそうだろう、これでも一応小学1年の半ば頃から今まで面倒を見てきてもらってたのだ。
でも、俺はお父さんしか信頼してなかったので、特に支障はないが...
弟はちがう。
弟は新ちゃんによく懐き、本当の親子のようにこの数年間を過ごし、挙句新ちゃんの事を『父ちゃん』と呼んで慕っていたくらいだ。
もしこの事を弟に話せば、間違いなく前回の離婚の時より傷が深くなるだろう。
俺『じゃあそれがわかってて、何でまた別れんの?』
母『あんたの意見は聞いてないんよ!
黙って聞いとけ
』
...ようするに、これは相談ではなく決定事項らしい。
そして俺は自分の言いたい事も言わせてもらえないまま、ひたすらお前のわがままを聞き続けるってか?
よくこの世の中に、親に対してこんな都合のいい息子がいたものだ。
だが一応母はその質問だけには答えてくれた。
俺はその答えを聞いた瞬間、そんな馬鹿な質問をした自分を後悔することとなった―――。
母『お母さん、他に好きな人できて、その人と結婚しようと思ってるんよ』
俺はブチ切れるかと思った。
これは互いに合わずに別れた前の離婚より、よっぽどタチの悪い理屈だった。
またしても、こいつのわがままのせいで俺や弟、新ちゃんが振り回される事になってしまうのか...。
俺はそのまま何も言わずに自室に戻った。
新ちゃんが帰ってくるのは次の日の朝―――
時間は確実に刻一刻と近付いてきていた。
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