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次の日の朝、俺は身支度を済ませると何も言わずすぐに学校に行くため家を出た。
母も弟もまだ寝てるらしく、静かな朝だった。
まぁ俺からすれば今日は誰とも会いたくなかったし、話したくもなかったので好都合だったのだが。
正直なところ、新ちゃんが帰って来る前に家を出たかったという気持ちが俺を学校に後押ししたのかもしれない。
ただ、
ここまで悲しい気持ちになったのは生まれて初めてだった。
たしかにお父さんと離婚した時もとても悲しいし、悔しい思いをした。
でも、俺はあの時よりも間違いなく身体的にも、精神的にも成長していたので
あの時とはまた違った感情が渦巻いていた。
ただ悲しいだけじゃない。
世の中の、人間の、母の汚さを知ってしまった俺には、ただただ悲劇を装って、悲しんで、涙を流して人に泣き付くなんて事はできなかった。
俺の中にあったのは
激しい憎悪と母に対するただの呆れのみだった。
どうして俺のまわりに同じ境遇の人はいないのか
どうして俺だけがこんなにもの別れを経験しなくてはならないのか
どうしてこんな母の元に生まれてしまったのか―――。
そんな事を考えながら学校の一日を本当になんとなく過ごして
気がつけば放課後。
でも家に帰るのが気まずいという思いもあったので、そこら辺を歩き回る事で時間を潰してから家に帰った。
時間は夜の7時、玄関の明かりをたよりに段差を上っていった。と、
そこで異変に気付いた...
俺『(新ちゃんの車が置いてない...?)』
朝方に仕事から帰って来ているはずの新ちゃんの車が、未だ無くなっている事に嫌な予感がしながらも、俺は玄関を開けた。
中に入ると、もうお決まりのようにリビングでは母が俺の帰りを待っていた。
そして第一声...
母『はやく帰ってこやんかったから、あんただけ新ちゃんに別れ言いそびれたなぁ?
まぁどうせまた何年かたったら前みたいに忘れるやろうから、あんまり情に流されやんとき。』
なんでも、今度は新ちゃんが家を明け渡す事になったらしい。
よく見ると辺りの家具が少し減っていたりした。
―――またしても、俺は礼すらままならないまま別れることとなってしまった。
だが、俺にはもう寂しいとか悲しいとか、そんな事はどうでもよかった
ただ
俺が自立できるようになるまでかかっても
犯罪者になってでも
必ず母を痛い目に合わせてやろうと誓った。
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