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引越しを済ませた俺は、ただただ暇な夏休みの毎日を送ることになった。
転校することになったので宿題なんてものはなく、全く初めて来る異郷の地に友達なんてのがいるはずもなく、夏休みが本当につまらなかった年になった。
なのに、こうも楽しい事が何も起こらないのに、嫌な事だけは望まないでも尽きてはくれなかった。
引越しが終わって落ち着いてきた頃、親父が突然家の家具などの整理をすると言い出し、親父の目から見て使えなさそうなもの、または役に立たなさそうなものは全て捨てられることになった。
せめて引越しが完了する前にやっとけばよかったものの、相変わらず自分勝手な男だ。
そしてその日のうちに、俺が幼い頃からずっとともに過ごしてきた見慣れた家具たちは、その全てが捨てられる事になった。
ただそれだけではなく、親父は家具とともに俺や弟の私物までもの全てを一掃すると言い出した―――。
なんでも今までの男に関係あるものは何一つ家に置いておきたくないらしい。
俺や弟はもちろん反対した。
俺たちにも一つ一つの私物に愛着はあるし、思い出だってある。
いきなりここで今まで生きてきた過程の欠片を全て捨てて忘れてしまえと言われたところで、そう素直に了承できるはずがない。
もちろん親父には却下され、例のごとく体罰で身体にわからされる事になってしまった...
ただ一つ違うことがあったとすれば、俺は親父のどさくさに紛れて母にも暴力をうけていた事だ。
理由はない。
ただ、その時の雰囲気という理由だけで蹴りまわされた。
さらに言うと暴力は、弟には何もせず俺だけに標的を絞って行われた。
母には何もしていないはずなのに腹を蹴られ、顔を踏まれ、髪を引き回された。
俺はお前らのストレスのはけ口なんかじゃない
ただ、何故俺なんかが生きているのかがわからない。
俺は、新しい生活でさえ普通の子どもとして扱ってもらえないのか―――
俺は、暴力が嫌いだ。
暴力では何も解決できないどころか、ただ反感を買うだけだ。
だから俺は、喧嘩をしても絶対に手は出さない。
それをしてしまうと両親と同じになってしまうから。
ただ、俺にも力さえあればこんな両親どもに復讐してやりたい
と思う事は、果たして悪い事なのだろうか。
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