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さて、俺の退屈な夏休みも終わりを迎え、とうとう新しい学校に転入する当日になった。
何故だかはわからないが、この学校では体育館で始業式をすると同時に、転入生に自己紹介をさせるようだった。
あとでクラスでやれば済む話なのに、実に面倒だ。
そして俺の新しい小学校生活が始まったわけだが、何しろ年が年である。
小学5年生ともなると各グループがすでに確立しており、そのグループだけで遊ぶ事が当たり前になっている年頃だ。
俺はもちろん転入直後からクラスで浮いた存在になっていた。
それに、俺はあんな親の元で育ったからか少々その頃の性格がやさぐれており
髪の色は金髪だったし、小学生ながらも、日頃から隠れておびただしい量の煙草や酒を摂取していて、結構柄が悪い小学生だった。
もちろん、今現在はすっかり抜け切った性格になっているのは言うまでもないが―――。
そういう要素が重なって、非常に近付きづらいし、何よりまわりから見ると転入してきた俺が怖くて関わらないようにしていた。
―――というのは、後にその頃からの友人に聞いた話だ。
第一印象はヤンキーだったらしい...
そんな学校で浮いた生活をする中、ある時俺に転機が訪れた。
それは、隣りの席の男子が俺に話しかけにきた事だ。
何てことはない、ただそれだけの他愛のないよくある話だ。
どこの小学校からきたか、とか
好きな遊びは、とか
だが、学校で浮いていた俺にとっては『話しかけられる』行為自体が珍しくて仕方がなかった。
俺は自然とそのクラスメイトに関心を抱くようになった。
話す機会も滅法増え、結局、初めて話した1週間後くらいにはすでに休憩時間に一緒に遊ぶ中になっていた。
さらにその友達を通じて、もっとたくさんのクラスメイトも俺に話しかけにくるようになり、本当に自然にクラスは友達ばかりになった。
それがきっかけになったのか、次第に俺の性格や生活習慣も丸く収まり、そして今に至るようになった。
俺は、お金や知識さえあれば一人だけでも生きていけると信じていた。
だが、まわりの人の心に触れることによって得るものも多いということを知ってしまった。
やはり、人をどん底から救い上げてくれるのはお金とかなんかじゃない、『人』だったのである。
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