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転校後、やっと生活が落ち着いて来た頃にその事件は起きた。
ある日俺は、度重なる両親の理不尽な暴力に耐え兼ねて家出をしたことがあった。
正直なところ、家出は初めてではなかったからそれ自体は簡単な事だった。
ただ、いつものようにすぐ見つかるような場所を通らずに、敢えて小道などを通って遠くまで行ってみたいと思った。
弟も流石にその時の暴力に理不尽を感じたのか、俺に続いて家出宣言をした。
決心したら後は行動あるのみ
俺『僕はこの理不尽な暴力にもう耐えられませんので家出します。
お母さん、今までの12年間立派に育てていただきありがとうございました。
お父さん、短い間でしたが血が違っている子どもをわざわざ家に置いていただきありがとうございました。』
そして、俺達は両親に他人行儀に皮肉を加えて別れを告げ、午後4時を過ぎた頃に家を出た。
しかし家を出て5分も経つと、弟がもう根をあげはじめた。
すると弟は近所にある廃工場の中に身を隠すと言い出した。
俺『お前、どういうつもりなんじゃよっ!
家出ついてくるとか言っといて口だけかよ、この根性無し!』
弟『兄ちゃん、冷静になろうよ!
僕らだけやったら生きていけやんよ!お金もご飯も何もないやん...』
俺『そんなんそこら辺から盗んだらなんとかなるやろが!
覚悟もないのについてくるとか言うなボケっ!
お前なんかここで凍え死んどけ!』
そんなやり取りが数分続いた後、俺達はそこで別れる事になった。
弟『兄ちゃんもここで見つかるのを待っといた方が身のためやでぇ!』
弟が後ろから叫ぶのが聞こえたが、俺は構わず無視して先を急いだ―――。
アテのない旅―――
漫画やアニメなんかだと聞こえはいい。
まさに『自由』を別の言葉で表すとこんな感じだろう。
しかし実際にやってみるとそんな明るいイメージとはかけ離れていて、どんどん自分が惨めな生き物に見えてくるのが自分でも分かった。
俺『...それでも』
それでも後に引けないとかではなく、あの居場所には帰りたくない気持ちが俺を後押しして
俺『ぜってぇ帰んない...』
幼かった俺の、忘れられる事のない家出旅は続く―――。
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