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その後の話を少し...
一度は本格的な家出を企てた俺だったが、弟の根っからのチキン精神による陰謀により母の友人に捕まってしまった。
それから友人が母に電話をすると、10分もたたないうちに母が迎えに来た。
母の車の後部座席には、のうのうと間抜け面を晒した弟がそこにいた。
しかし、今すぐにでも殴り倒したい衝動を意地で押さえ込む。
『お前はあほか!』
それが母の第一声だった。
家出しておいて言うのもなんだが、もう少し他の言葉があるんじゃないだろうか...
俺『いや、家出するって言ったやん。
お世話になりましたまで言ったやん。』
母『本当に帰ってこやん奴があるか!
あんたどれだけみんなに迷惑かけたと思ってるんな!』
その場では面倒になるのが目に見えていたので黙っていたが、勝手にみんなに呼び掛けて大事にしたのはあくまで母である。
そこを吐き違えるな。
俺『家出やのに帰ってくるわけないやん。』
母『じゃあなんで家の近くでうろついてて、今こうして見つかってるんな!
どうせ家出する根性もなかったんやろが!』
俺『それは...――』
―――言えない。
弟が心配になってわざわざ長い時間をかけて戻って来たなんて、恥ずかしくて言えたものじゃない。
母『中途半端な覚悟でそんな事するな!
警察に連絡するところやったやろが!』
...どうせ俺を心配してたわけじゃなく、まわりに迷惑をかける事が嫌だっただけなんだろ?
俺は今まで、あんたの口先だけの人生を一番間近で見てきた。
今更そんな綺麗事を信用できるはずがない...
.....とりあえずそれでその場は終息し、次の日になると後腐れもなく普通の日常に戻った。
ただ、
弟『兄ちゃん結局戻ってくるとか、やっぱり一人やったら無理やったやろ?
だから最初から僕の言う事聞いておけば―――』
その刹那、様々な思いを込めた俺の右ストレートが弟の頬に突き刺さった事は言うまでも無い。
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