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神崎は大声で泣いていた。
霊前に備えられた白菊が冬の寒さに固まりついているようだった。
三谷奈津美の家族は真っ黒な衣装で身を包み
神崎の叫び声を聞きながら、静かに静かに泣いていた。
備えられていた写真にうつる三谷奈津美の瞳はやっぱり光を産んでいて
ただの紙にすぎない物質的なものなのにあたしにはとても美しいものに見えた。
その瞳に宿っていた光が消えた理由を
この場所にいる全ての人が知らない。
彼のした背徳行為も
誰も知らない。
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