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宿禰の原田に対するイメージは、若干馬鹿な気のいい人なので、永倉に物を教える姿など想像がつかないのだ。
組長格で頭が良いと言われて、宿禰が思い浮かべるのは、武田や山南辺りだ。
むしろ、宿禰の中で原田は、真っ先に除外される部類だ。
そんな宿禰の様子に、永倉と沖田は納得した。
左之(原田さん)馬鹿っぽいからか……。
二人して同じ結論に到る辺り、普段から少しは思っていたのかもしれない。
しかし、当の本人は、同僚や部下に馬鹿にされていることを知らないまま、新撰組の出番は今か今かと、槍を携えて待っている。
「まあ、なんだのう?左之の奴は普段は阿呆そのものだが、頭が良いんだわい」
永倉が笑いを堪えながらそう言うと、宿禰は驚いた表情を見せる。
原田を馬鹿だと思っているからこそ驚いているのは明らかだが、永倉も沖田も笑いを堪えるのに必死だ。
「原田さんが頭良いわけ……」
宿禰はそれを真っ向から否定しにかかろうとしていた。
仮にも上司を馬鹿だと決め付けるような反論をするのはどうかとは思ったようだが、原田が頭が良いというのが信じられない様子だ。
容保の命令が響いたのは、そんな時だった。
「撃てぇっ!!!」
その声に続いて、銃声が轟くのが聞こえた。
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