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「ふ、ふん!!そのような童相手にこの谷 三十郎が本気を出すわけがあるか!!」
谷が声を張り上げてそう言えば、沖田の殺気は更に濃厚なものとなって谷を威圧する。
もはや笑顔すら見せずに谷を冷ややかな目で見据え、言葉で何かを言われる以上に恐怖を与える。
谷がその威圧感に脂汗を流しながら黙していると、沖田の肩を近藤が叩いた。
「総司、お前が怒るのももっともだが、そろそろ落ち着きなさい」
優しい声が沖田の纏う禍々しい空気を和らげていく。
殺気から解放された谷が、安堵の溜め息を漏らしたが、それも束の間で近藤がはっきりとは表に出さない形で釘を刺す。
「谷さん、あまり暴言を吐くのはよくありませんよ?ご自身の負けを認めずにいるのは、自ら自分の価値を貶めることになります」
近藤にまでそう言われれば、さすがに谷ももう何も言えずに黙るしかない。
黙った谷を冷ややかな目で見るものは少なくはなかった。
宿禰が示した通りに、山道を進んでいく。
意識を失った宿禰の側には、山南と井上がついているので、沖田もひとまずは宿禰の心配を頭から払い除けて山道を登っていく。
しばらく登ると、山崎が樹の枝から飛び降りてきて隊士達の先導をする。
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