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天王山での出来事から七日が過ぎ、新撰組の中に立ち込めていた虚無感や沈んだ空気がやっと払われて、普段の空気が戻ってきた。
宿禰は中庭で槍を振るう原田をボーッと見ている。
「…………」
沈黙している宿禰に、原田は気まずそうに問いかける。
「おい、黙ってないで何か話しかけろよ?」
原田は頭を掻きながら若干困ったような顔をして、縁側に腰を下ろすと、手にしていた槍と別に立て掛けていた長柄の武器を手に取る。
宿禰は原田の手にある長柄の武器を見ると、興味津々といった目線を原田に向けた。
その目線に気付いた原田は、苦笑を漏らす。
こいつは本当に武術に熱心だ、と半ば感心、半ば呆れながら、
「両方とも槍に見えるか?」
そう言って手にした二本の長柄を宿禰に渡す。
受け取った宿禰は先端をしばらく見比べて、原田の顔を見て微笑んだ。
花が綻んだような宿禰の笑顔に、原田はますます苦笑させられる。
宿禰は嫌がるだろうが、同い年の少女よりもよほど少女然としているのだから、原田も苦笑するしかない。
「これ片方が矛ですよね?」
宿禰の答えに、原田は驚きが隠せずに宿禰の顔を見た。
相変わらず少女のような微笑みを湛えている宿禰に、原田は頭上に黄色い疑問符が浮かんでいそうな表情を浮かべて質問する。
「何でこれが矛だって分かったんだ?」
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