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鼻を擽る鉄臭さと、紅く染まった地。
そしてその地に倒れる無数の屍。
ここは平和とは言い難い、惨く汚れた戦場の世。
息を飲むような惨い光景を恐れることなく無言で立ち尽くす、一人の少女の姿がそこにあった。
胸元まである淡黄色の長髪を風になびかせながら、どこか冷めた目で見詰める少女は、紅く染まったその地へと足を進めた。
ビチャッ。と響く水音は勿論、水溜まりなんて綺麗なものではなく、無数の屍から流れる人間の血。
バァンッ!と響いた一発の銃撃は少女の足元へ放たれ、今まで止めることのなかった歩みをようやく止めた。
「…まだ生き残りがいたとはな。」
焦ることも怯えることもせずに、ただ平然と呟いた少女の目つきがその言葉とともに変わる。
目の前には、片手に銃を持つ一人の男がしっかりと銃口を向けて構えており、それにニッコリと笑う少女。
笑ってはいるものの、それは見かけだけの偽りもので放たれているものは、その容姿からは想像もつかない殺気。
自分よりも遥かに大きな男性を簡単に身震いさせてしまう、その殺気は先程の笑顔とは違い本物だった。
「…ひぃっ…!?
ま、待ってくれっ…。」
「その言葉を口にした人を、アンタはどうした?
…サヨナラ。」
どさりと腰を落とし懇願する男を冷ややかな目で見下した彼女は躊躇することなく銃の矛先を向け、一発の銃弾を響かせた。
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