灯かり

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仄かな灯かりが 竹筒の中で揺らめいて 城下町の至るところに 人目を惹くよう設置 揺らめく灯りは 物憂げで 暖かみがあるけれど 足元が全く見えなくて 『私』が消えそう 回りは沢山の人で 楽しそうに騒がしく会話をしているけれど 何だか取り残された気分になる 普段 人通りもなく 閑散とした道を 多くの足音と 騒ぎ声が占拠する 皆 足元の光に惹かれていて 一番綺麗な色の三日月には気付いていない 普段 挨拶をするあの人が 何だか違うように思えて 悴む夜の中では 余裕が無くて 少し 寂しくなる 彼方此方に設置された会場には 同じ音が響いて 人の集まりの不均等さに 少し 寂しくなる ここで 手を離したら 私は完璧な一人ぼっち どの集団にも 属せない 一人でいる事が 許されない環境 『誰かと一緒』が前提だと まるで学園祭の時のような気分になる 静かに 灯りを感じる暇もないまま 人の波に呑まれていく こんなに喧しいと 感覚も鈍ってしまう 足元が見えなくて 人混みで 幾度も視点がぶれる その度に 気遣われる 私は 見失ったりはしないのに ふと 苦笑する 大丈夫ですよ 貴方を見失う事など 決してありませんから 御祭りの時期は大抵 『誰か』がいて 私はその 付属品みたいで 一人でいる事を 許されない環境に 苛立って悲しくなって 一人留守番で 家族連れの騒ぐ声を聞く度に 羨望・妬み・悲しみ・苛立ちを 全部混ぜたような感情に支配されたような 未だに忘れられない 幼い感情を毎回掘り起こされる ゆらゆら揺れる その蝋に灯る火を 消えないように 手で守りたい気持ちと 一思いに消してやりたい気持ちが交差して 結局何もせずに 振り子のように揺れる 自らの気持ちと 重ね合わせていただけだった *
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