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「刹那、髪、おもしろいことンなってるぞ」
ミッションがひと区切りついて、珍しくマイスター4人が揃って地上で待機行動にある日だった。
報告書の作成も終わらせ、トレーニングルームに向かおうとしていた刹那を呼び止めたのは、やはりというべきか、ロックオン・ストラトスだった。
「おいってば。髪、乾かさないで寝たんだろ」
しようがない奴だな、とでもいいたげなロックオンの表情に、刹那は軽く頷きを返して背を向ける。
髪などに気を遣うのは面倒で、いつも適当にしていた。伸びてきたら自分で切っていたし、邪魔だったらターバンでまとめればいい。
「髪、伸びたんだな。なんなら切ってやるぜ」
性懲りもなくロックオンが、刹那に並んで歩きながら髪をくしゃくしゃに撫でてくる。
他の誰にされても振り払っただろうが、ロックオンのこの仕草には、「俺に触るな!」とは言えないでいた。そもそもこうして触れてくるのはロックオン・ストラトスくらいだったが。
「おーい。聞いてんのか」
聞いている、という返事に代えて、立ち止まってロックオンを見上げる。
「お、どうだ?今日外いい天気だし、外で」
「いい。自分で切る」
ことばを遮るかたちになったが、ロックオンはまるで気にしない様子だった。
「へぇ。いつも自分で切ってんのか」
「ああ」
話はこれで終わり、とばかりに今度こそトレーニングルームに向かう。その背中に、ロックオンはまた声をかけた。
「晩飯には出てこいよ」
頷きだけ返す。頭のなかは既に、今日やっておきたいトレーニングの内容に占められていた。
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