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そのまま、見るともなしにモニターを見遣る。ニュースキャスターが読み上げる世界の情勢も、テロップも、ただ通り過ぎるだけだった。
「アレルヤ・ハプティズム」
どのくらいそうしていただろう。そんなに長い時間でもないはずだったが、いつの間にかレストルームに来ていた、紫紺の髪をしたマイスターの声に我に返った。
「…ティエリア。何?」
薄笑いを浮かべるアレルヤに、ティエリアは不機嫌そうな顔をますます深くした。
「ぼうっとしているのなら、刹那・F・セイエイを見習ってトレーニングでもしてきたらどうだ。まったくマイスターとしての自覚はあるのか?」
いつになくくどくどしいのは、きっとティエリアも、休暇じみた待機行動時間を持て余しぎみだからか。
「…自覚はあるよ、もちろん」
どことなく疲れたように応えるアレルヤを見て、ティエリアはますます柳眉を逆立てる。
「疑わしい。すぐにもミッションがあるやも知れんのだからな」
「そうだね、今度は…生き残れるかな」
語尾はかすかに吐息に乗せただけだった。だがティエリアにはしっかり聞こえていたらしい。
背を向けレストルームから出ようとしながらも、迷いなく言い放つ。
「馬鹿なことを」
アレルヤが目線をあげると、出ていったと思った姿がまだそこにあった。
「…万死に値するぞ!」
そのまま今度こそ出て行ってしまう。
そうだ、ほんとうはわかっている。
生き残れるかな、などという生易しい心持ちではだめなのだ。
死ぬ訳にはいかない。世界を変える、その日までは。
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