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そういって再び視線を累奈から友人へと戻す。そこにあるのは女の子のカタマリ。同級生から下級生、上級生のお姉さま。挙句の果てにはこの学校の先生という様々なバリエーションに囲まれた一人の男の娘。
「あいつは俺のお嫁さんだからな」
「…………」
「おいおい、そんな冷たい視線で俺を蔑むなよ」
いやだって。あいつ、そんじょそこらの女の子よりも可愛いんだよ? 身長低いし、顔も女の子っぽいし。……まあ、あのモテる様は一度ひっ叩いてやりたいくらいに憎たらしいけどさ。
そんな言い訳を心中で呟きながら、この前理科の授業で見た液体窒素のような冷たさで俺を眺める彼女の視線にそう言葉を返すと、累奈は大きく溜め息を吐く。
「ねえ、私、一度貴方に本格的な心理テストをしてもらいたいと思うの。そうしたら絶対に学者がこぞって飛びつくような実験結果が出ると思うから」
それは暗に俺が異常者だと言っているのかな?
「失礼な。この学校にいる人間の中だったら、間違いなく俺が最も普通だという自信があるというのに」
流石にその誤解だけは許容出来なくて不機嫌にそう返す俺。
この学校は少々特別で、家が裕福な人間から始まって、芸能人からオリンピック候補、飛び級生などの常識外が選り取り見取りのオンパレード。そんな人達が集まるこの学校で奇人扱いされるのはいくら俺でも納得できない。
「あら? それは私も含めて、……ということかしら?」
「何言ってるんだ。明らかに先陣きってるだろ?」
本で叩かれた。
「……全く。そんなに高木君が大好きなら、あの女の子達みたいに話しかけにいけばいいんじゃないの?」
俺と同じように女の子に囲まれているインフレな友人、高木優希の方を見ながらそう促す累奈。あれ、そういえばこいつは優希に興味がないのかな、とか思いながらもう一度友人の周りを注視する。
「ああー……、今はちょっとな……」
「ん? 何かあったの? やっぱりあの女の子集団に入るのが嫌だとか?」
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