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そうしてから、そんな風に言葉を濁して返答。するとそれを不審がったのか、累奈がそう興味深そうに尋ねてくる。
「あのさ、優希の頭の上になんか光ってるの見えないか?」
流石にこの距離からでも人を指差すのは失礼なので、自分の頭の上を指差し大体の位置を教える。
「ん~……。何も見えないわね」
「そっか、お前ツイてるな」
唸りながら答えた彼女に俺がそういって素直に羨ましがると、累奈は意味が分からないといった風に首を傾げる。
「ねえ。あんまり話が見えてこないんだけど、どういうことなの?」
分からないことをそのままにして置きたくないという彼女の性格からだろう、そう体を乗り出してそう詰め寄ってくる累奈。
しかしながら累奈も化け物と言えども曲がりなりにも女の子。こんな夏の間ぐらいしか役に立たない上に知って得するどころか損しかしない無駄真実を教えてもいいものか……。
「ところでさ。お前って怖いものとか平気なタイプ?」
「幽霊の正体を探るために一晩墓地で待ち続けるぐらいには得意かしらね」
わお。こいつは大した御嬢ちゃんだぜ。
「おお、そいつは想定外だな。お前に怖いものはないのか、完璧超人」
「私は貴方のお財布に入っている雀の涙ほどの小銭が怖いわね」
それを知っていてなお狙ってくる、貴女のその徹底した容赦のなさが今の俺にとって一番の恐怖です。
「お、俺は鬼さんじゃないからやらないぞ」
「初めからいらないわよ、そんなはした金」
自分で言うのならまだしも他人にこうまで言われると、流石に己の侘しさに涙があふれそうになる。
「……そういえばさ、優希の奴この前幽霊の女の子を助けてな……」
「……貴方、それ本気?」
会話の話題にと思い出した話の切り出しから、なんともイタいものを見る目で俺を虐める累奈。しかしどんな風に見られようともこれはなんとも出鱈目な真実。
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