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「惜しいな累奈。そんな簡単にこの思いが届くのなら、俺は今こいつを連れて学生の夢である平日サボりデートへと旅立っているはずだ」
「おだまり下郎」
即座に切って捨てる彼女の下郎扱いには俺のハートも思わずナインカウント。
そう軽く挫けながら地面に膝をついていると、顔を赤くした優希が俺を起こそうと服を引っ張る。
「もお……。さっきから英語は間違えたり、こんな道路で膝ついたりして。少しは隣で一緒にいる僕の事も考えてよ~」
苦言を口にしつつも、顔は苦笑いで俺の奇行を諌める優希。
そして、そんな優希をまさか、なんて驚いた顔つきで見つめるのは累奈。
「ねえ、孝章君……。高木君ってもしかして……?」
累奈にしては珍しく俺みたいな劣等生なんかに疑問の答えを求めてくる。しかし、まあ、それもしょうがないか。だって、普通に生きてきたならこいつは滅多にお目にかかれない記念物みたいなものだしね。
「ああ。じゃなかったらこれだけ人気があるにも関わらず、あんなハーレムを維持できるわけないだろ? こいつはな……」
ごくりと唾を飲む音が聞こえる。かく言う俺の額にも汗が一筋。そんな中一人、その話の中心人物だけは不思議そうな顔で俺達を見比べる。
「鈍感、なんだよ……。俺のジョークにも気付かない程の病的、かつ末期的な、さ」
慣れてきたとはいえ、こう改めて再認識してしまうと思わず眩暈がする。しかしそれこそがこいつの魅力なのだとも思うし、別段それで俺に迷惑がかかる訳でもないないので問題はない。
むしろ……。
「?」
こいつが俺の言葉に対して少しでもアリな対応をした日には、俺は二度と日の当たる世界には戻れない気がする。
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