短編

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「何故止めた?」 不機嫌そうなルイスの声がローザの鼓膜を震わせた。 「レストは私の獲物。止めを刺すのは私」 抑揚のない声で、ローザは言った。ルイスはその場に縫い止められたかのように動かない。否、動けなかったのかもしれない。ローザの声にはそれだけの威厳のようなものが隠されていたのだ。 「ローザ」 レストは静かな声で愛する人の名を呼んだ。 「これが私の仕事。だから……」  ローザは再び銃を構えて静かに言った。 「さよなら、愛しい人」 誰にも届く事ない彼女の本音が響き渡る銃声に消される。 「ローザ……良かったのか?」 「……これが、私の仕事……」 ローザは意味ありげに微笑んで、銃口を自分の頭に当てた。 「おい、何をするつもりだ?」 「仕事を終えた私はもう必要ない」 そう言って彼女は躊躇いなく引金を引いた。銃声と共に弾けたのは血ではなく光。ルイスは改めてローザが天使であったことを思い出した。 「お前、馬鹿だよ。必要としてくれる人間ならここにいるだろう」 ルイスは静かに涙を流した。冷たい雨が降るなか、一人叫んでいた。大切な人を失った苦しみを忘れ去るように。 ようやく、二人を隔てていた壁が壊され、互いを愛しく思えたハズだった… でもそれは思っただけ… もしもこの世界に神が居るならば、生まれ変わった時…私と貴方を歪みあう者通しにしないで下さい。 私と貴方が望む…今度こそ結ばれる運命… 住む世界が違うからー… 私達は結ばれてはいけなかった… Still,I Love you ~壁の向こうの君へ~ 私と貴方の望む壁の無い世界… 追い続けた夢は 冥府で叶うのか それとも、永久に叶わないのか。 物語は、ここから始まる。
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