短編

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「何故殺さない」 悪魔であるレストは言った。銃を持った少女、ローザは悲しげな表情でレストを見つめていた。天使でありながら冷酷ななローザは冷たい瞳をまっすぐにレストだけに向けている。 「殺す必要がないから」  レストは耳を疑った。殺す必要がないから……?天使と悪魔が憎み合って生きているこの世界でそれが何を意味するのかこの少女は分かっているのだろうか。相手が死なない限りは自分の命を実感することは出来ないだろう。いつ殺されてもおかしくない世界に生きているというのに彼女はそれを感じさせない。 「貴方は殺されたいの?」 「お前に殺されるなら本望だ」 「貴方、馬鹿?」 「よく言われる」 一度降ろした手を上げ、ローザは微笑んだ。 「なら、生かしておく必要ないね」 レストは目を瞑って死を覚悟した。その様子を見たローザはクスッと小さく笑った。 「Arrivedelci」 聞き慣れた声ではなかった。レストはハッとして顔をあげた。その瞬間視界に入ってきたのはローザに想いを寄せる少年、ルイスの姿だった。 「お前か、ガキ」 「敵討ちの始まりだ」 優雅な動きでルイスは二本の剣を引き抜いた。彼の両親はレストの父親に殺されてしまった。彼もまた、レストの母親に大怪我を負わされた。友人も悪魔に殺されてしまった。彼が悪魔を憎むのは当然だ。 「貴様の命、天に捧げろ!」 鋭い突きがレストを襲った。体の半分以上は機械でできているというのに、ルイスの技は繊細なものだ。機械の繰り出す技であることを認めたくないほどだ。 「……これまでか……」 レストが再び目を瞑って死を覚悟したその時、眩い閃光が走った。放ったのはローザだ。ローザの能力は光を凝縮させ形のあるものにするもの。銃弾にそれをのせれば威力は増大する。
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