ふたりごと。

「気付いたんだ」

玄関の前で何度か深呼吸をした後、ドアノブを捻って扉を開けた。

「た……ただいま……」

家の中は電気がついていて明るいけど、シーンとしていて、人がいる気配がない。

「あれ？お父様？」

わざわざケータイに電話をかけてきたくらいなのだから、説教目的で待ち構えているのだと思っていたのに。

リビングを見ても、その先にある台所を覗いてみても、誰もいない。

すぐに怒られると思っていたから、ホッと胸を撫で下ろす。

電気がついてるってことは、家の中には居るんだろうけど。

自分の書斎かな？

どうせ後で呼び出されるんだから、今の内に怒られておこう……。

私は深くため息をつきながら、二階にある父の書斎へ足を進めた。