「気付いたんだ」

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「ああ……、ああ……、じゃあ明日……」 ケータイに声を発する父の言葉を聞いて、会話の終了を予感する。 電話が終ったら、この扉をノックして、中に入って、いさぎよく怒られよう。 胸に手を当て、目を瞑る。 すると、 「じゃあおやすみ。明日こそは会えるから。……ちえみ」 ケータイに話し掛ける父の言葉に、耳を疑った。 ……ちえみ? 父が口にしたのは、母とは違う、女の人の名前。 違う。重要なのはそんなことじゃなくて……――。 ――『篠田智恵美』 不意に、いつか教室で聞いた言葉を思い出した。 篠田智恵美。 彼はあの日、確かにそう言った。 今聞いた名前は、篠田くんのお母さんと、……同じ……?
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