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早く帰ったって、どうせ誰もいないくせに。
いつまでも学校に残っていられたら困るから。
娘が不真面目な生徒に見えたら、自分が困るから。
それだけ。
暗くなったら危ないから。とか、遅く帰るのは心配だから。とか、そういうんじゃない。
父が去った後、床を見て黙り込む私に、篠田くんが、
「これ以上誰かに見られたら面倒だな……。やっぱり教室じゃヤバいか……」
と、ため息をついた。
「私帰る」
自分の通学バッグを手に取り、その場を離れようとすると、
「待った」
引き止められる手にイラつき、キッと睨む。
だけど、その次に起こされた行動は、私が思い描いていたものとは違って、
「え……っ」
顔に手を伸ばされ、突然視界がぼやけた。
すぐに眼鏡を取られたと気付く。
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