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「ちょっ……!」
取り替えそうと手を伸ばしても、見えていない視界の中では自分の腕が空を掴むのが微かに見えるだけ。
「返し……――!」
返して。と、伝え終わる前に、今度は三つ編みに結んだ髪の毛が解ける感覚が襲う。
手をやると、先ほどまでゴムで結んでいた場所には緩くウェーブされた自分の髪の毛。
犯人は、もちろん目の前にいるこの人。
「何なのよ!」
ぼんやりとする視界に腹が立ち、怒鳴りつける。
誰もいない教室では、その声はよく響いた。
人前でこんなに大きな声を出したのは、いつが最後だっただろうと、冷静な自分が頭のどこかいる。
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