「泣かせていい?」

3/30
153835人が本棚に入れています
本棚に追加
/536ページ
「乙華、あの男子と付き合うのはやめなさい」 午後十時。 久しぶりに、家の中で父に話し掛けられたかと思ったら、話題がこれだった。 「付き合ってなんか……いません」 下を向き、口ごもる。 あの男子。 父が言うのは、きっと篠田圭吾のこと。 今日の放課後、二人で教室に残っているのを見られてしまったから。 どこまで見ていたんだろう。 抱き締められたところは……見られていないはず。 もし見られていたのだとしたら、「付き合うのはやめなさい」なんて、そんな言葉だけで済ますはずはないのだから。
/536ページ

最初のコメントを投稿しよう!