「口止め料」

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“娘”じゃないもん。私の名前。 乙華なのに。 ここの生徒達にとって、私の名前は“娘”。 理事長の“娘”。 きっと、本当の名前なんて誰も知らない。 私を乙華と呼ぶ生徒は、この学園内にはいない。 「ってかさー、今時あの髪型ってどうなの?」 私が彼女達の前を過ぎ去った後、背中の方からコソコソと笑う声が聞こえた。 「やめなって。聞こえるよ?」 やめろ。と言っている割りには、もう一人の声も笑っている。 ……聞こえてるよ。 言いたいことがあるなら、ハッキリ目の前で言ってよ。
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