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梢さんは何もしてこなかった。
『それだけ喰らえば充分でしょ?』と、意地悪っぽく笑うと、美砂ちゃんを抱いてキッチンの方へと向かって行った。
とりあえず、皆には許してもらえたのだと勝手に解釈して今は沙羅の治療を受けている。
余談だが、綾さんはずっとニヤニヤしながらビデオカメラを回していた。
久しぶりに会って早々この人は何をしてるんだろうと不安になったが、なるべく気にしないようにその場を立ち去った。
「幸助君、大丈夫?」
沙羅は俺の左頬を治療しながら心配そうに尋ねてくる。
そう思うなら止めて欲しかったんだけど……
「大丈夫大丈夫。沙羅が治療してくれてるしね」
と、感謝の意味を込めて微笑みかけた。
皆(綾さん除く)は俺に一発ずつかましてきたが、沙羅は唯一俺に何もせず治療してくれている。
こりゃ感謝感激だろと思い喜びを表現したのだが……
沙羅は何かを企んだような笑みで俺を見ていた。
普通に可愛いんだけど、すごく怖いオーラを漂わせているというか……
俺が多少警戒気味に沙羅の顔を覗いていると、とうとう沙羅はその口を開いた。
「……幸助君、私がこのまま何もせずに済ますと思った?」
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