忘れかけた遠い記憶

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誰も近寄ってこない朝の時間。 といっても、チャイムが鳴る直前に入ってきたので、一分もない。 その一分を、俺は窓の外を見て過ごす。 走って校庭を横切る生徒。 しきりに腕時計を見ながら、校門を閉めるタイミングを計っている体育教師。 朝練を引き上げる運動部の部員。 やがてチャイムが鳴り、担任が入ってきて始まる。 何も変わらない、つまらない平日の朝。 昼休みになっても、暇だ。 たった一人の友人は、おそらく今頃告白をされに行っていることだろう。 教室で長い時間過ごすのは授業中だけでいい。 俺は弁当と水筒を持って席を立った。
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