忘れかけた遠い記憶

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「そんな哀れ極まる君に、ホイ!」 ポン、とファンシーなクマさん柄の布に包まれた四角い何かを手渡してきた。 代わりに、俺の焼き肉弁当は割箸ごと奪われてしまったけれど。 「あの、これは……」 「焼き肉うっまー」 話聞いてねえよこの上級生。 ちなみに、うちの中学の制服にはバッチがついており、学年によって色が違うのだ。 この少女は緑、つまり二年生。 俺は赤だから一年生だ。 相手の学年が分かれば敬語を使うか否かが判別出来るので、割と助かっている。 「よっこらしょういち」 奇妙なかけ声とともに、あぐらをかいて少女が隣に座った。 女子、それもけっこう可愛い娘が隣に座られると緊張する、 と思ったが、あぐらかいて焼き肉弁当をガツガツ食ってるもんだから、緊張というより呆然といった感じだ。 「ん?何してんの?」 心底不思議そうな顔で尋ねてくる少女。 いやいや、俺のWindows98ぐらいの容量の頭じゃどうにも現状を把握出来ないというか…… 「YOU、食っちゃいなよ、弁当をYOU」 不思議な言葉を使ってクマさん柄の四角い何かを指差す。
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