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暑い。
優衣は夏にこの国に来たことを少し後悔していた。
暑さに耐えきれず、レンタカーの冷房をいれる。
「ふぅ……」
車内の気温が落ち着いてきたところで優衣は息をついた。
ネイとの待ち合わせ場所まであと二キロ。そんなに時間はかからないだろう。
少し休もうと決めた。
市街地だからすぐに店も見つかった。飲み物だけ購入して、車に戻る。
優衣はスポーツドリンクを飲みながら去年のことを思い出した。
一年前にこの国に来たときは愕然とした。
こんな市街地にストリートチルドレンが、本当に沢山の子ども達がいるのだ。
ボロボロになった服。裸足の子も沢山いた。
あまりの状況に思わずカメラを構えた。不謹慎かもしれないが、職業柄、仕方ないことかもしれない。
優衣は夢中でシャッターをきった。
この状況を撮らないといけないような、誰かに伝えなければならないような感覚に捕われていたのだ。
「彼等に興味がおありですカ?」
ガイドの男がいつもと変わらない柔らかな物腰で尋ねてきた。
「もしも彼等の様な方に興味がおありなら、マザーテレサの所に行ってみるのも良いかも知れませン。『死を待つ人の家』と呼ばれているところでス」
「う~ん……」
「行こうよ」
優衣が考えていると、一緒に来ていた香奈が言った。
「いいの?」
「私も行ってみたいし」
香奈は、にかっ、と笑った。
優衣も気にしていた本人から了承を貰ったので、ガイドの申し出にのっかることにした。
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