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「疲れた~」
コーラを飲み干しながら香奈がもらした。
「ごめんね、香奈。巻き込んじゃって」
「アハハ。いーよいーよ。旅は道連れだっけ?なんだかんだで私も楽しいし」
「ふふ。ありがとう」
死を待つ人の家。
実際に行ってみると名前とはだいぶ雰囲気の違う場所だった。
日本では老人介護施設が近いかもしれない、と優衣は思った。
「来年も来ようかなぁ……」
「なら仲のいい人、あそこで作るといいと思うヨ。いろいろ泊まる場所とか教えてもらえるからネ」
そしてガイドの紹介でネイと出会ったのだった。
そろそろ行かないと間に合わなくなる。
優衣が車を走らせようと座席を起こすと、窓の外に少女がいた。
「どうしたの?」
「あの…その……」
少女をよく見ると何も履いていない。服もボロボロだ。そして何より、すぐ後ろに恐らく弟であろう男の子がいた。
ものごい。
ストリートチルドレン達の生きる方法の一つだ。
しかし、いつも必要な分しか持ち歩かない優衣の財布には大金はない。あげられる服も何もない。
優衣はサイドシートの鞄を漁った。
すると、日本から持ってきた飴が少しだけ見つかった。
「ごめんなさい。あなた達にあげられるもの、これくらいしかないの」
優衣は少女に飴を四つ渡した。
「ありがとう!」
少女は満面の笑みを浮かべた。
眩しいほどの笑顔に、思わずシャッターを切った。
恵まれているはずの日本でもこんなに優しい笑顔を見たことは、優衣にはなかった。
「弟と二人でわけてね」
コクン、と頷くと少女は弟の元に走っていった。
「ふふっ」
写真を現像する時のことを思って優衣は少し笑った。
少しニヤニヤしていると、窓をノックされた。
「優衣!」
「ネイ!?」
「久しぶりだね。喉が乾いちゃってここまで買いに来たんだよ」
「そうだったの」
「あぁ。ところで何をニヤニヤしてるんだ?」
「ふふふっ、内緒。ところで、ストリートチルドレンってどうすればなくなるかしら?」
「あっはっは!国会議員が頭を悩ましていることを簡単に答えられるわけないじゃないか」
「そうよねぇ……」
今夜ホテルでひたすら話し合ってみよう。それで何が解決するかはわからないけど、もしかしたら何か変わるかもしれない。
そう決めて、優衣はネイを車に乗せた。
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