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さて、どうしたものか。
朝。眠気覚ましのコーヒーをいれながら奈緒子は考えていた。
テレビや小説では、酔ってしまうとその時の都合の悪いことは忘れてしまう。しかし、現実はそう優しくはないようだ。
奈緒子はコーヒーを飲みながらリビングでつい昨晩のことを思い返した。
本当に偶然だった。
浩次と再開したのは。
「また怒られたぁ~……」
某商社前、夜十時。
肩を落とした奈緒子が歩いていた。
会社に入って三年。二十五になっただけでは仕事はできるようにならなかった。
「あの頃は…ただ大人になれば仕事もできるようになると思ってたのになぁ……」
数年前を思い出しながら歩いていると、突然後ろから声をかけられた。
「奈緒子?」
「え?」
思わず返事をしてしまい、仕方なく振り返った。
「やっぱりそうだ」
「浩次!?」
声の主は酒井浩次。
奈緒子の高校時代の友人だった。
「久しぶりだな」
「ホントだ~。最後に会ったの、同窓会のときだっけ?」
「あぁ~たぶんあの辺りかなぁ。仕事終わり?」
「うん。コンビニでビールだけ買って、晩酌するつもりだったんだけど……浩次もくる?」
「そうだなぁ~……。それよりも、昔行ったR・Rって店覚えてる?あそこ行こうよ」
R・R。大学時代に一度だけ行った店の名前だった。友人カップルに、浩次と半ば無理矢理連れて行かれた店でもある。
「あそこまだやってたの?」
「やってるやってる!」
「懐かしいなぁ~。行こうよ!」
数年前に行った店の事が懐かしく感じるあたり私も年をとったな、と奈緒子は心のなかでつぶやいた。
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