カクテル

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 つーっ、とグラスの表面を水滴が流れた。 「奈緒子、結局別れちゃったのか」 「そーなの。そういう浩次はどうなのよ?」 「ウチはなんも無いよ。適度に遊んで、仕事して、妻とも月一回のセックスがあるくらい」 「なーんだ。セックスレスにはまだなってないんだ」  ふふん、と奈緒子は笑った。 「でも、だいぶマンネリ化してきちゃってさ。愛してはいるけど、少し退屈」 「あーあー。そりゃ幸せなこって」  奈緒子が皮肉っぽい言葉を投げ付けても、浩次は情けない笑みをもらすだけだった。 「そういえば、浩次は大丈夫なの?」 「何が?」 「そろそろ帰らなくて。奥さん怒るんじゃない?」 「あぁ、それなら大丈夫。けっこう同僚の家に泊まって朝帰りのこともあるくらいだから」  ははは、と笑う浩次を見て、よく奥さんも怒らないものだな、と奈緒子は思った。 「とはいえ、今夜泊まるとこはそろそろ考えないとな」 「じゃあウチくる?」 「えっ!?」  奈緒子の提案に、浩次はオクターブ高い声を出した。 「あたしは別にいいよ」  目の前の新しいピンクのカクテルに指をつけながら、奈緒子は言った。  浩次を真っ直ぐと見つめる奈緒子の顔は少し赤らんでいた。  それが性的なものからくるものなのか、アルコールによるものなのか。浩次にそれを判断することはできなかった。
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