3人が本棚に入れています
本棚に追加
つーっ、とグラスの表面を水滴が流れた。
「奈緒子、結局別れちゃったのか」
「そーなの。そういう浩次はどうなのよ?」
「ウチはなんも無いよ。適度に遊んで、仕事して、妻とも月一回のセックスがあるくらい」
「なーんだ。セックスレスにはまだなってないんだ」
ふふん、と奈緒子は笑った。
「でも、だいぶマンネリ化してきちゃってさ。愛してはいるけど、少し退屈」
「あーあー。そりゃ幸せなこって」
奈緒子が皮肉っぽい言葉を投げ付けても、浩次は情けない笑みをもらすだけだった。
「そういえば、浩次は大丈夫なの?」
「何が?」
「そろそろ帰らなくて。奥さん怒るんじゃない?」
「あぁ、それなら大丈夫。けっこう同僚の家に泊まって朝帰りのこともあるくらいだから」
ははは、と笑う浩次を見て、よく奥さんも怒らないものだな、と奈緒子は思った。
「とはいえ、今夜泊まるとこはそろそろ考えないとな」
「じゃあウチくる?」
「えっ!?」
奈緒子の提案に、浩次はオクターブ高い声を出した。
「あたしは別にいいよ」
目の前の新しいピンクのカクテルに指をつけながら、奈緒子は言った。
浩次を真っ直ぐと見つめる奈緒子の顔は少し赤らんでいた。
それが性的なものからくるものなのか、アルコールによるものなのか。浩次にそれを判断することはできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!