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コーヒーを飲みながら改めて考えて、奈緒子は少し顔を赤らめた。
酔っていたとはいえ、とんでもないことをしてしまった。恋愛のような特別な感情があるわけではないが、やはりこれは浮気になってしまうのかもしれない。
いくら会ったことがないとはいえ、むやみ敵を増やすのは得策ではない。
「おはよー」
「おはよ。コーヒー飲む?」
「お願い……」
浩次の方はまだアルコールが抜け切ったわけではないようだった。
棚を開いて、奈緒子は少し考えた。
奈緒子は元彼にもらったコーヒーカップを使っていた。当然、ペアのカップもある。
少し悩んだ末、来客用のコーヒーカップにした。
体を重ねたとはいえ、あくまでも浩次は友人であり、客なのだ。
「さんきゅ」
リビングのソファでのんびりくつろいでいる浩次が姿勢を直しつつ言った。
「そういえばさ、昨日奈緒子が飲んでたカクテル。あれ、恋が叶う、って言われてるんだってさ」
「そうなの!?」
知らずに飲んでいた自分に、また恥ずかしくなった。
「その様子じゃ知らなかったみたいだな」
浩次は爽やかに笑った。
「さぁて、んじゃそろそろ帰るよ。子どもも待ってるしな」
「そっか、またね」
「その内また遊びにくるわ」
「浮気宣言?」
「かもな」
二人で顔を見合わせて笑った。
今はこのままでいい。愛も恋もない関係でも。もう少しだけ私は遊んでみたい。
だからこのままでいいのだ。
のんびりと帰る浩次の背中を見ながら、奈緒子は思った。
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