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黒いローブを着た男は、オンボロのアパートの階段を上がり部屋のドアを開けた。
がらんとした部屋に置いてある電話が鳴り響き、留守番に変わった。
『今回の任務ご苦労だったNo.241201。報酬は君の銀行口座に入れておく。
次も頑張ってくれ』
それだけ言い残すと電話は切れて再び部屋に静寂が戻った。
No.241201と呼ばれる男は身につけたローブを脱ぎ捨てる。
そこには黒い寝癖だらけの髪と光を燈さない目、無精髭を生やし、長身でどちらかと言うと痩せた感じ20代ぐらいの若い男がいた。
男は冷蔵庫を開けると缶ビールを取り出す。
プルタブを開くと溢れんばかりの白い泡が噴き出してくる。
だが、余韻に浸る事なく一気に口の中へ黄色い液体を流し込む。
「……マズイ」
No.241201は顔が青ざめながらソファーに座り、テレビをつけた。
テレビではバラエティー番組や歌番組等の娯楽番組で溢れている。
作られた笑いに満ちたうるさいだけの画面を、男は嫌悪しチャンネルを変えていく。
そして、ニュース番組を見つけると、頬杖をついてぼんやりと見つめた。
最近発見された新鉱物“如宝石”についての情報が流れている。だが、そんなニュースには男は何の興味も示さない。
知ったところで今の自分の生活には何の関わりもないからだ。
No.241201はあくびをしテレビの電源を消すと、ゆっくりと立ち上がり風呂場に足を進めた。
シャワーを浴び雨に濡れて冷たくなった身体を温めていく。
漠然と過ぎていく育成ゲームの様な毎日。
風呂場から出る、タオルで身体を拭き、上下灰色のジャージに着替えた。
そして、流れ作業の様に電灯を消すと隙間風が吹く真っ暗な部屋でNo.241201は眠りについた。
2、3時間経った時、一本の電話が暗闇の部屋の静寂を壊した。
No.241201は目を開ける。
眠れない毎日が日常茶飯事の男にとって、2、3時間の睡眠は辛くない。
男は立ち上がると電話の方に歩き出し受話器を上げた。
「もしもし」
「唐梨子町三番地の公園で若者が騒音を鳴らし、近所に被害が出ている。ランクEからCに上がった。方法はどんなやり方でもいいから奴らを捕まえろ」
電話の主はそれだけ言うと電話を切った。
灰色のジャージを脱ぎ捨てNo.241201は黒いローブを身につけフードを深く被ると闇に消えた。
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