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月が夜道を照らし、家中の電気が消えた真夜中にバイクのマフラーの音が公園を支配している。
そこで4人の少年達が、その先の運命を知らずに今日も騒いでいた。
「おい悟、どっちが早く頂上まで行けるか勝負しようぜ」
「いいな、負けた方はジュースをおごるって事でいいな、良和」
少年達はバイクに跨がりマフラー音を煽る。
ガソリンから新エネルギーに変わった事で排気量の効率が良くなり、マフラーは愛好達の心を潤すパーツとなっている。
「それじゃあ、奈美。合図頼むわ」
「うん、わかった」
髪を金色に染めた奈美と呼ばれる女子高生が旗を持って乗っている二人に合図を送っている。
その旗が降りると彼らは走り出した。
降ろされたとほぼ同時に月の光が雲により遮られ公園に暗黒の世界をもたらし、普段はついているはずの街灯が何故か点滅し消えてしまった。
その様子に動揺を隠せない奈美達に恐怖のサイレンが鳴り響く。
「やべぇ鳴っちまった!
奈美、逃げないとあいつらが来ちまうよ」
「でも亘。悟と良和は……バイクでいっちゃったよ」
「仕方ないよ、でもさっさと逃げよう!」
亘と言われる少年は奈美の逃げようと手を掴んで走り出した。
このまま見つかる事なく逃げ切れれば良いなと、心の中で祈る二人。
だが、それを闇は逃がそうとはしない。
駆け出す亘達に立ち塞がる漆黒のローブを身に纏ったの男。
襲い掛かる悪寒と恐怖に吹き飛ばされた様に、二人は尻餅をついた。
「犯罪撲滅法違反により
逮捕する」
No.241201は二人を見下ろし、機械の様に決まり文句を言いながら近づいてくる。
その悪魔の一歩が、近づくなと言う思いの壁を打ち破っていく。
すると、奈美を両手で軽く押して亘は喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
「奈美!逃げろ!」
「で、でも……」
躊躇する奈美に少年は笑みを浮かべている。
その手元には鉄パイプが掴んでいる。
「俺さ……足すくんじまって動けねぇんだ。だから……言ってくれ」
「……わがっだ」
奈美は両目に涙を溜めて鼻声になりながら、小さく頷いて走っていく。
逃げる奈美に鋭い眼光で標的を定めて、ローブの男は駆け出した。
だが、その時だった。
「逃がすかよ」
男の足を亘の右手はガッチリと掴んで離そうとはしなかった。
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