第壱話:影に咲く花

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「はぁ……はぁ……は」  奈美は街灯が照らす夜道を肩で息をしながら走っていた。 亘の抵抗のお陰で黒ローブの男から逃げる事が出来たが、そこしれぬ胸騒ぎが心を支配している。 連絡が来ていないかと携帯を開く。 青白い光を放つ待受画面には、同じ様な派手な化粧をした数人の女子が映っている。 だが、そこに着信ありという文字はない。 「大丈夫よね。きっと」 自分に言い聞かす様に独り言を呟く奈美。 無事を祈りながら携帯を鞄の中にしまい、再び走りだした。 しばらくして、相当な距離を走ったせいか、化粧が落ち目元がパンダの様になっていたが、気にする余裕は無かった。 ただ、黙々と走るが心臓が張り裂けんばかりに高鳴り飛び出そうとする。 こんな事なら参加しなければ良かったと、奈美は後悔した。 だが、そんな少女を見下ろす街灯がまた不自然に点滅し始めた。 「あいつが来る」 そう直感した奈美は脈打つ心臓に無理を言わせ、更に速度を上げるが闇は彼女を追い詰め支配していく。 住宅街にも関わらず深夜のせいか、逃げ込める家はない。 そして、月が雲に隠れ真の闇に包まれると、闇が遂に迷える子羊の様になった少女に牙を向いた。 「犯罪撲滅法により貴方を逮捕します」 その低い声は少女に全てを思いしらせ、その場に崩れさせた。  血の臭いが染み付いた革の手袋が奈美の手に手錠を掛ける 「確保。あと二人」 No.241201は奈美を担ぐと闇の中に姿を消した。  場所が変わり峠をバイクで走る二人はお互い一歩も譲らずデッドヒートを繰り広げていた。 「カズ、やるじゃん流石俺のライバルだ」 「俺を誰だと思ってるんだ?あの赤い閃光と呼ばれたカズ様だぜ?」 二人は蛇の様に曲がった峠の道を交差しながら上手く曲がっていく。 そして次の右カーブを曲がろうとした瞬間、彼らは見てしまった。 黒いローブを着た男を、そして彼に担がれている見覚えのある少女を。 「うあぁぁぁぁぁぁ」 彼らは男を避けきれずバイクは横転し、二人は崖へと放り出された。 『俺達死ぬんだ……』 二人は同時に死を予感したが、死神はそう優しくは無い。 男は少女を降ろすと崖から飛び降り二人を掴み、猫の様に無音で着地した。 「全員確保。君達はこれから5年間、更正機関に 入所しその犯罪を悔い改めてもらう」
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