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そんなビルの最上階である事件が起こっていた。
このビルには階段とエレベーターが備わっているのだが、最上階だけはエレベーターだけでしか行くことができなくなっていた。
最上階のフロアには部屋が1つしかなく、その部屋の唯一の扉とエレベーターが一直線の廊下で繋がっているだけである。
そしてその廊下では何故かたくさんの男たちが倒れていた。
その男たちは全員が黒いスーツを来ていて、いかにもボディーガードと言える様な人たちであった。
そんな男たちがエレベーターから扉まで連なるように横たわっているのである。
うつ伏せだったり、仰向けだったりと倒れかたは人それぞれだったが、表情だけは全員驚愕で染まっていた。
おそらく何が起こったかもわからない内に一撃で意識を刈り取られたのだろう。
そしてこのフロア唯一の部屋。
ここに二人の人影があった。
一人は五十代くらいの髭を生やした男性で、白いスーツを着こなしかなり威厳のありそうな人である。
だが、今はそんな面影は微塵もなく、腰を抜かし体が震えている。そしてその顔には恐怖で染まっていた。
対するもう一人の人物は、体全体を真っ黒なフードで隠し、顔も鼻まで上げられたスカーフとサングラスのせいでよくわからなかった。
身長はだいたい160cmくらいだろうか。少し小柄でまだ幼いという印象を受けた。
だが特に目立っていたのが何故かフードを頭に被らないことでさらけ出していた腰まで伸ばした黒髪であった。
それは闇を連想させるほど真っ黒で、見るものを魅了するほどとても神秘的であった。
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