鳴らない電話

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鳴らない電話

「和也、行くぞ」 「……わかってるよ親父」 「ほら貴男、いつまでもそんな顔してないの」 「…………」 「貴男! もう和也くん行っちゃうのよ! しゃんとしなさい!」 「…………」 「貴――」 「何でお前なんだよ……」 「貴男?」 「何でお前なんだよ!」 「ちょっ、貴男!」 「因縁つけてきたあいつらが悪いんじゃん! 原因作った俺が悪いんじゃん! 何も知らないのにお前を悪者にした周りの奴らが悪いんじゃん!」 「貴男! いい加減になさい!」 「…………」 「お前悪くないじゃん! 悪いの俺らじゃん! なのに何でお前がいなくならなきゃなんねぇんだよ! そんなのってねぇよ!  そんなの俺は認めねぇぞ!」 「…………」 「行こう親父……」 「いいのか?」 「待てよ和也!」 「うるせェよ! 俺だって一緒にいてェよ! でも無理なんだよ!」 「和也……」 「親父。引っ越し屋の人に迷惑かかる。もう行こう」 「……ああ。それでは、色々ご迷惑おかけました」 「いえ、そんな」 「…………」 「じゃあな」 「…………」 「貴男……」 「バカヤロー……」
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