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番頭の対応に芹沢が満足する筈が無い。 虹はいつでも芹沢を止められるように身構えたが、その必要は無かった。 芹沢は大層ご立腹な様子で、「そうか、天誅組には金を出しても、我等には出せぬと申すか」と吐き捨てる。 そして芹沢派の連中と共に大和屋を出て行った。 手慣れている……。 大和屋の弱みもきちんと把握して、最大限にその弱みを利用しているな……。 虹は芹沢達を追いかけながら、ふと思った。 ああ、毎回こういう裕福な商家に乗り込んでは、軍用金と称して金をせしめているのか……。 だから近藤さん達より羽振り良く豪遊が出来るんだな。 我ながらしっくりくる答えに虹は口角を釣り上げる。 芹沢さん、それは士道に背き、勝手に金策しているということだ。 遂に寝首を掻かれる証拠が見つかってしまいましたね……。 土方さんがこれを知れば、必ずあなたを追い詰める。 物騒な笑みを口許に張り付ける虹だったが、一つの疑問が浮かび上がり立ち止まる。 しかし、乗り込んで金を巻き上げようとした割には、引くのが早くないか……? いつもの芹沢さんであれば番頭を斬り捨てるか、店を壊すだろう。 何故それをしない……。 この虹の疑問は、その日の夜に解決した。
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