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五月も終わりを迎える頃、組織の均整がとれていない事に気付いた土方は新たな組織編成を決めることにした。 一同が雑魚寝している夜、土方は一人机に向かった。 助勤には今と変わらない面子に新たな隊士数人を加え、助勤十四人、調役を島田魁、川島勝司、林信太郎の三人、勘定方を岸島芳太郎、尾関弥平他計四人とした。 これらの士官は圧倒的に近藤派が占める事となる。 そして残りの隊士は平隊士ということにした。 局長、副長、副長助勤、調役、勘定方、平隊士とすらすら半紙に名前を書いてゆき、半刻程で書き上げた。 出来上がった組織図を眺めた土方は満足げに笑う。 しかしある人物の名前が漏れている事に気が付き、笑みを引っ込めた。 忘れていた事に落胆したのか、その人物自体が困る存在なのか土方は頭を抱えた。 秋月を忘れていた……。 厄介だな……。 土方は目を閉じて虹について思い返す。 実のところ虹の存在は土方の頭痛の種だった。 聞くところによると腕は斎藤と互角。 だがあいつは何か信用出来ねえ雰囲気がある。 純粋な親の仇討ちがしたくて此処に入った訳でもなく、だからと言って国を思う志がある訳でもない……。 兎に角、得体の知れねえ野郎だ……。 悩んでいるところを見ると土方は虹に何かしらの職を任せたいのかもしれない。 まあ、得体は知れねえ奴だが頭は切れる。 物事を見極める力もある。 「その点は俺も認めざるを得ないんだが」 年の割に落ち着き、ふてぶてしくても一応土方は虹を認めているのだ。
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