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178年春――東戒の都、弾汗山[ダンカンサン]の宮殿には文武の臣が集まっていた。まだ寒さが残り、庭の花も満足には咲いていない。
中央の玉座には顔を真っ赤にした興奮気味の阿蘭亢が座り、前列には宰相の大吉里[ダイキツリ]と大元帥の万休英[バンキュウエイ]が控えている。
「よい案だ。これが成功すれば甘邪も窮地に立たされるに違いない。」
阿蘭亢は再び声を張り上げ手を叩いた。
「流石は劉狄[リュウテキ]だ。この策が成功したあかつきには、そなたを大将軍に任ぜよう。」
劉狄と呼ばれた将は列から出て玉座下に平伏した。
「必ずや成功致します。どうか陛下には落ち着かれて吉報をお待ちください。」
こういって劉狄は列に戻った。
「元帥、具体的な編成はどうなっている?」
劉狄の言葉に頷いていた阿蘭亢は万休英に問いかけた。
「はっ。我らが取るべきは敦煌・酒泉です。季周軍はおそらく酒泉を重点的に護るでしょうから軍を二手に分けます。
敦煌には、私と閻金忠[エンキンチュウ]、劉狄が向かいます。酒泉には石祝門[セキシュウモン]を大将に、伍斯[ゴシ]・帯甲号[タイコウゴウ]を副将にして派遣します。兵力はそれぞれ8万と4万です。
季周軍の兵数は多くて4万ですから分散させれば撃ち破るのは簡単で兵法にも適う策です。」
万休英は笑いながら自信満々に答えた。
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