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先の単于継承に敗れた阿蘭亢は兄、甘邪単于から単于庭[ゼンウテイ:匈奴の都]を奪還することを悲願としていた。その布石として西鮮卑を併合したが、甘邪単于の力は強大であり幾度かの戦は連戦連敗だった。そこで劉狄は繁栄を保っているが軍事的に劣る季周をも武力併合することを考えたのである。
「だが、後漢が介入してくるということはあるまいか。」
皆が称賛の声を上げる中、大吉里だけは渋い顔をしている。東戒の前国家南匈奴は後漢の庇護下にあったため、後漢は東戒の勢力拡大を恐れ今までも度々口出しをしてきている。仮に利害が一致し後漢と季周が手を結べばいくら軍事的差があっても苦戦は必死だ。大吉里はそれを恐れていた。
「これは、これは。宰相は兵法書を読まれないのか。兵は神速を貴しとす。奇襲をかければ一月足らずで陥落しましょう。それ以上長引くことはないかと思いますぞ。陛下、ご決断を。」
万休英は反論し阿蘭亢に顔を向けて促した。
「うむ。これより我らは単于庭奪還のため季周を併合する。一月で朕に朗報を聞かせてくれ。諸将、全力を尽くして任に当たれ。」
「ははっ。」
阿蘭亢が高らかに宣言すると列臣は平伏し、ここに東戒は秘密裏に軍事行動を開始したのである。
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