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冷たい冬の風が私の頬に当たるたびに涙がこぼれおちそうになる。
私は今から目の前にあるあのフェンスを越えて新しい世界へと一足先にいかせてもらうことにする。
誰もいない屋上にひとり立っていると世界中に人間が自分しかいないんじゃないかなんて錯覚してしまいそうになる。
この涙が喜びの涙なのか、悲しみの涙なのかわからないけれど今この涙を流してしまえば今までこらえてきた全てが崩れおちそうで私は必死にこらえた。
死ぬことに対して恐怖はある。
だけど生きていくことのほうが私は怖い。
フェンスに足をかける。
フェンスの冷たさが私の体温を奪う。
「あのさ、やるなら俺の視界に入らないところにしてくれよ。」
突然声をかけられて驚いた。
声がするほうへ目を向けると少し離れた所に人が寝てる。
暗すぎてきがつかなかった…
ただ寝ころんで空をじっとみつめている。
声の質からして男の人だろう。
「何してるんですか?」
少し気になった。
死ぬ前に少しこの人と話しがしたいと思った。
男は何も言わずにただ空を見つめている。
何なんだろこの人…
男は無言でゆっくりと腕をあげ、空を指差す。
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