第2話

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「はいゴメンよぉ」   群がる野次馬を避けながら、寒さに身を縮めながら黄色いテープで仕切られた場所に入っていく男に数名の制服警官が駆け寄る。   「ご苦労様です、警部」   敬礼をする警官達に適当な挨拶を返して更に男は奥に進む、そこにコートを着た女性と鑑識課という腕章を付けた警官が立っていた。   「よぉ、おはようさん千景ちゃんに北坂君」   「あ、おはようございます佐伯警部…」   「いい加減そのちゃん付けやめて下さい警部…ムカつきますから…」   佐伯は見知った二人に声を掛けて返事を待たずに通り過ぎる、沢山の警官が遺留品や証拠品の捜査をしていた。   「警官、遺体はあちらです…科捜研に行くそうですが…」   後ろから追い付いてきた千景が差した場所に二つ、シートを被せて並べられている遺体があった。   「こりゃあ…酷いな…毎度ながらに」   近付いてシートを捲った佐伯が顔をしかめる。   「被害者の身元は分かっています、一人は三番地区の旅行会社に勤務している室戸美智恵…22歳、もう一人は草薙学園の高等部二年の綾野夏美です」   メモを開きながら説明する千景に手を挙げて「もうわかったよ」と言って佐伯は遺体に触れる。   二人の身体にはこれまでの事件と共通している物が付着していた、更に二人の死に方も同一だった。 表面の皮以外の中身を全て取られた様な状態。   ミイラの様に水分が無くなって干からびた…という訳ではなく、『中身が全て無くなっている』のだ。   「犯人はこの二人を」   「無理に説明しなくてもいいって千景ちゃん、これまでの6件と同じなんだろうからなぁ…」   言い淀む千景の言葉を再び遮り、佐伯は顎に手を当てて目を閉じる。   被害者はこれで8名、全ての被害者の共通点…それは全員が若い女性であり、且つ、乱暴をされた挙げ句に身体の中身を抜かれて死んでいるという事…か。   「どこのどいつがこんな惨い事をしてるかは分からんが…必ず俺達が捕まえてやるからな…」   そう言って手を合わせた佐伯は、そっとシートを被せて事件現場を後にした。
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