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なかなか仕事って無いもんだなぁ…
俺は求人情報誌をテーブルに投げてソファに倒れ込んだ。
まぁ、選ばなきゃあるんだけどな…
以前に居た食品の配達は風邪を引いた隙にクビになったし…かなりしんどかったしなぁ。
かと言ってこのままダラダラと過ごすのもマズいよな、絶対…そもそも静真が黙っているはずないか。
「コラっ!ナガトさんはまたゴロゴロして!仕事まだ見つからないの?」
「ん~、選ばなきゃあるんだけどなぁ…何をしようか迷っちゃってな」
部屋に入ってきたのはやはり静真だった、今日は珍しく『女装』していた。
「やっぱり静真はそっちの格好の方が自然に見えるぞ、元々スタイルだって悪くないし…いや、むしろ出るとこ出てるし…せっかくだから思い切って彼氏でも作ったらどうだ?」
「うるさいなぁ…ボクは今のままがいいんだよっ!」
俺の言葉を払いのける様に手を振って静真が食器棚からコーヒーカップを取り出し、手慣れた手つきでコーヒーメーカーを作動させる。
「で、相変わらず来客用のやつから手をつけるのな…」
俺の分まで淹れてくれたのは有り難いんだが…もはや無傷の来客用のお茶関係は全滅か。
「うーん、やっぱりコーヒーの淹れ方はナガトさんに勝てないなぁ…何が違うんだろう?」
そう言うほどでも無いと思うがとりあえず黙っておくか、少しぐらい静真よりも凄い所が無いといよいよいたたまれないからな。
なんて事を考えているといつの間にか静真がテレビをつけていた、お昼のニュースです、と言うアナウンサーの声を久しぶりに聞いた気がする。
全国ニュースも勿論やるが、この時間の短いニュースは基本的にこのムラクモ内のローカルな物がメインだ。
最近は物騒な事件も多い、下手をすれば『前』の静真を助けた時みたいに俺と同類の様な奴が起こしている…なんて可能性がある事件も多くなってきた。
「あ…」
小さく声をあげた静真の視線を追ってみる、テレビの画面に静真が通う学園の制服を着た少女が映っていた。
「これでこの殺人事件の被害者は八名に登り、事態を重く見た警視庁は…」
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