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知り合いか?と言う問に静真は頷き「何度か挨拶をした程度だけど…」と答えた。
「…広いようで狭いからな、このムラクモって所は…」
「うん…」
ソファに座り直した俺の隣に静真も腰を下ろす、先程まで湯気をたてていたコーヒーを口に運ぶと、少しだけ冷めていた。
「犯人…まだ捕まってないんだね…」
顔見知り程度といってもこのムラクモにある二つのマンモス校の片割れに通い、挨拶を交わす仲になるってのは…生徒数を考えれば何かのきっかけでもない限り難しいだろう。
そんな『顔見知り』がこの世を去った…不安にもなるし、悲しくもなるよな。
俺はテレビの画面を見たまま無言で静真の頭を撫でた。
少しくすぐったそうにしていたが静真も動かずにそのまま身を任せてくれていた。
「仕事探しのついでになるけど、お前も可奈保さん達も守るからさ…そんな泣きそうな顔すんな」
「…うん、ボクも可奈保さんも美奈保姉さんも…安心すると思う、けど…お仕事見つけた方がもっと安心するよ、だから頑張ってね」
…むぅ、こりゃあマジで仕事探し頑張らないとなぁ。
「と、ところで静真…お前そういう格好してるってことはどこかに出掛けるんじゃないのか?」
「ん?あっ!!そうだったああっ!!」
ソファから飛び上がっていそいそとコーヒーカップを下げる静真が近くに備え付けてある壁掛け時計に視線を投げる。
「うあっ!!もう時間ないやっ、ナガトさんカップ洗って片付けておいてね!じゃあ行ってきまーす!!」
まさに飛ぶような勢いで出て行ったな…さて、じゃあ俺も仕事探しにでも行くかな…
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