255人が本棚に入れています
本棚に追加
やたらと疲れるやり取りを見た俺は、自分でも分かるくらい肩を落として帰途についた。
「ああ、キミ、そうキミだよ…ちょっと聞きたい事があるんだけど、時間はあるかな?」
公園の近くを通りかかった警官に呼び止められた。
「はぁ、何でしょう」
気の抜けた返事を返す俺に、その警官が苦笑気味で話しを切り出した。
どうやらテレビでやっていたあの事件の事を聞いてまわっているようだった。
「この地区だけで既に三件も同じ被害が出てるんでね…何か怪しい人物を見たとか、そういうの…無いかな?」
佐伯と名乗った男は頭を掻きながら俺の顔を見る。
知っている事があれば協力するが…テレビで見た事くらいしか知らないと答えると佐伯は肩を落とした。
「ふぅ、空振りかぁ…この辺りの人なら何か知っているかもと思ったんだけどなぁ」
「あの、どんな感じの事件なんです?」
連続殺人という事は知っているが、余りに情報が少な過ぎる…これが『同類みたいな奴ら』の犯行なら、俺も動かなきゃならないが。
佐伯は一度辺りを見回し「オフレコだぞ」と付け足すと話せる範囲の事件の詳細を説明してくれた。
奇妙な殺害方法と、数多くの遺留品がありながら目撃証言が一切ない事、それら全てが奴らを連想させる内容だった。
「…刑事さん、もしかしたら手伝えるかも知れない…」
「何だって…本当に?」
当然の反応だが、俺も実際に遺留品を確認しなければ何とも言えないが…この事件は明らかに『臭い』
「…じゃあ、キミが自由になる時間が出来たらここに電話をくれないか?俺の知り合いの店の番号だ…」
俺の顔をまじまじと見つめていた佐伯が、コートのポケットから一枚の名刺を取り出して俺のエプロンのポケットに入れて立ち去った。
「さて…どうなるやら」
先ずは店に戻ってコレを置いてからだな、少し急ぐか。
最初のコメントを投稿しよう!