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「ナガトさん!もう朝ですよ!」
勢い良く開いたカーテンが阻んでいた日差しが差し込む。
日の光でシルエットを作る人物が腰に手を当てて此方を見ていた、俺は目をこすって体を起こす。
「…静真、お前なんで毎日俺を起こしに来るんだ?…いや、有り難いには有り難いけどな」
シルエットを作る人物、静真は俺が住むこのビルのオーナーの養子だ。
俺が一室借りた次の日から毎日欠かさずに俺を起こしに来るという…変な奴だ。
オーナーの奥さん曰わく、気に入られたからだって話しだが…これがマンガやアニメのありきたりな設定なら美少女のはずなんだけど…
「ほら、ご飯食べてしっかり仕事を探して来なさい!」
半分美少女で半分美少年なんだよな…コイツ、まぁ…つまり特殊な体って事らしい。
かいがいしく台所から朝飯を運んで来るそのエプロン姿を見れば…まぁ、ありきたりな設定の及第点は頂けているのかも知れないな。
そんなくだらない事を考えながら俺は顔を洗い、意識をハッキリさせる。
俺は柳田長瀞(やなぎだながと)、最近無職になったダメ人間だ…現在求職中。
「で静真…お前もここで朝飯かよ?」
「良いじゃないか、毎日ナガトさんにご飯作ってあげてるんだから…この位はさ」
テーブルに置かれた二人分の朝飯から良い匂いが漂ってくる、匂いに釣られた俺が洗面所から出てくると静真は既に席に着いていた。
「…ホント、お前は良い嫁になるな…おじさんが保証してやるよ、うん」
「はいはいありがと、ナガトさん…さ、食べようよ」
俺の目の前には炊きたてのご飯と味噌汁、さらにほうれん草の和え物と目玉焼きが並び、静真の前には食パンが二枚と目玉焼き…後は俺が来客用に用意してた紅茶か。
「それ…来客用なんだが…まぁいいか、頂きます」
「ボクや可奈保さん達以外誰も来ないじゃないか、ていうかボクも一応来客…だと思うから良いんだよ、頂きま~す」
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