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目をパチクリさせて驚いた表情で俺を見る静真の気配が『元に戻った』。
「あ、あれ…ボクは何を」
「暴漢を暴力で倒した、ていう痛快な話は面白かったが…もうちょっとおしとやかにいこうな、静真」
頭の上に?を幾つか浮かべながら、紅茶をすする静真が訝しげに俺を睨む。
「それは冗談として…いいか静真、お前…昨日の事は誰にも話すなよ」
「昨日の…事?」
「痴漢の話しだ、まぁ話したくもない話題だろうから大丈夫だろうが…念の為に釘を刺しとく」
俺の真面目な表情が珍しかったのか食パンをかじりながら静真は大人しく頷く。
なるほど…寝起きとは言え、今気付いた…間違いなく静真は『印』を付けられている、その証拠は…匂いだ。
僅かにだが、静真とは『別の臭い』を感じる…静真はこんな匂いじゃない、以前大掃除を手伝った時に階段を踏み外した静真を助けたから分かる…その時に覚えた『匂い』以外の『臭い』がある。
「ふぅ、ご馳走様でした」
食べ終えた静真が残った紅茶を飲み干して、早足気味に食器を下げる。
その静真の体にまとわり付く『気配』と『臭い』が俺には『見えた』。
「じゃあちゃんとお仕事探してね、ナガトさん!じゃあ行ってきま~す!!」
食器を片付けた静真がエプロンを外して駆け出す、それを見送りドアが閉じたのを確認して俺も立ち上がる。
「………なるほど、コイツは臭うな」
その気配が放つ臭いを追わなきゃならないな…今日は職探し、出来そうに無いな。
俺は着替えを手早く済ませて家を出ると、一定の距離を保ちながら静真を追いかけた…
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