255人が本棚に入れています
本棚に追加
この街は地下鉄を含めた公共の交通機関がかなり発達している、学園線という専用の路線まである。
学園線の改札を通り抜けて俺は静真の姿を探す、学生ばかりの所に俺はかなり目立つかと思ったが…教師も居るのでまだ探し易い状況だった。
静真と同じような学生服姿が見られるが、この人工島には二つしか学校は無い。
その二つともが一貫教育のマンモス校らしいが…お、居た。
スーツ姿の教師らしき女性と親しげに話す静真から少し離れた場所に立つ。
会話は聞き取れないが十分ここから見えるので良しとするか…さて。
俺は腕時計に視線を落とす、後五分で電車が来る…今のところ怪しい人物が静真の近くに来ているという事は無い。
眺めていた方向から少しずつ光が近付いて来る、独特のレールを軋ませる音を立てて電車が止まりドアが開く、乗り込む時に静真がこちらを見たので慌てて身を低くする。
まぁ、隠れる必要はないけど…つい。
車両の中は既に何往復かしているのか、俺が予想したよりは混雑していなかった。
これなら楽に静真を追えるな。
そう思って一瞬目を離した瞬間、静真の姿が消えていた。
「マジかよ…お?」
走り出した電車に足を取られないように吊革に手を伸ばし左右を確認する、静真の姿は直ぐに見つかった。
乗り込んだ出入り口とは反対の出入り口付近…確かそっちは開かない筈だが。
近くに先程静真と話をしていた教師らしき女性と数名の学生達が並ぶ。
って…おい、なんであんなに固まっているんだ?
あれじゃ学生共がバリケードの役目をしてる様にしか…まさかあの女が!?
俺は急いで空いていた席に座り、電車の壁に手を触れた。
その瞬間俺の左手の小指を壁に『溶け込ませる』様に侵入させた。
反対側の壁面までたどり着かせて視覚をリンクさせる、その瞬間に両足をガクガクと震わせ恍惚の表情を浮かべながら涙を流す静真の姿が飛び込んできた。
迂闊だった、痴漢と言われて犯人は男だと思っていたが…女が犯人だったとは!
しかも状況はかなりマズい、印を付けられている時点でまさかとは思っていたが…あの女、今『静奈(静真の本当の名前)を食う』つもりだ!
最初のコメントを投稿しよう!